アクセントの獲得と幼児語彙における方言アクセントの生起分布
白勢 彩子（日本学術振興会特別研究員／名古屋大大学院）
筧 一彦（名古屋大）
桐谷 滋（神戸海星女子学院大）
筧 一彦（名古屋大）
桐谷 滋（神戸海星女子学院大）
本稿では，単純語アクセントの獲得過程について，代表方言アクセントの東京，京都，鹿児島方言を比較した．実験の結果，東京及び京都方言地域におけるアクセント発話実験の結果とは異なって，鹿児島方言地域の幼児は成人と異なるアクセントを生成した．獲得過程において幼児がアクセントを「誤る」ことがあり，この点が個別言語的に観察されることが示された．上記結果の影響要因の一つとして幼児が日常使用する語彙のアクセントの生起分布を検討したところ，東京及び京都方言では偏りがあり，鹿児島方言では偏りがないことがわかった．ある特定のアクセント型が多く幼児の語彙に生起しており，この高頻度に生起するアクセント型に引き寄せられて幼児が成人と異なるアクセントを生成したとも推測できるが，今回の結果からこの考えは支持されなかった．つまり，アクセントの獲得に対して幼児の周囲を取り巻く環境的側面は強く影響しない可能性が示唆された．
