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日本語における「定記述」による二人称指示
―メトニミーの観点から―

金井 勇人(早稲田大大学院)

日本語の二人称名詞には使用制限がある.そこで日本語では,固有名詞・定記述が頻繁に使われることとなる.そしてこの両者においては,定記述は固有名詞より失礼でない.

固有名詞は「個体」と,定記述は「個体」の集合である「全体」と,本来的に対応関係にある.この関係を利用したメトニミー的指示が,定記述による二人称指示である.

指示主体が発する定記述「課長」は,「課長」という「全体」に対応する.「課長」という「全体」は,メトニミーを介して,指示対象=課長職にある「山田」という「個体」と結びつく.定記述による二人称指示は,このような間接的なプロセスを経る.

「山田」が上司である場合,固有名詞「山田さん」による二人称指示が失礼とされるのは,それが直接的だからである.従って指示主体は,指示対象に対する失礼さを回避するため,メトニミーを介在させた,定記述による間接的な指示を,選択するのである.

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