複合動詞「-出す」の分類
―統語論的・意味論的見地から―
日野 資成(福岡女学院大)
本発表では,複合動詞「-出す」の統語論的,意味論的分類と,動詞「出す」と複合動詞中の補助動詞「-出す」の統語論的,意味論的関係の記述を試みた.
まず,「-出す」を合む複合動詞124語を『逆引き広辞苑』より抜き出し,「V1(連用形)て出す」と言える語と言えない語に分類した.前者については,「目的語が V1 の動作主の領域内から領域外へ移動するか,V1 の動作主の領域外から領域内へ移動するか」によってさらに下位分類し,後者については「V1 出る」と言える語と言えない語に下位分類した.「V1 出る」と言えない語については,「開始」のアスペクトを表す語と「完了」のアスペクトを表す語にさらに下位分類した.
動詞「出す」が補助動詞になるとき,他動詞が自動詞になる.意味論的には,「出す」の持つ「外へ」の方向性の抽出化(「飛び出す」など),「出す」の「突発性」の抽出化と空間から時間への抽象化の同時発生(「泣き出す」など)と考えた.