受身文と「てもらう」文の意味的関連性について
―「関与(Inclusion)」と「排除(Exclusion)」における潜在的解釈の観点から―
李仙花
日本語における受身文と「てもらう」文の意味的関連性を捉えるには、利害性と働きかけ性を総合的に考慮することと、「関与」「弱排除」「強排除」の概念を用いることが必要、かつ有効であることを示した。
日本語の受身文は排除では迷惑性の解釈、関与では迷惑性と恩恵性の解釈が許される。「てもらう」文は強排除では使役(働きかけ性)の解釈、関与と弱排除では使役と受身(非働きかけ性)の解釈が許される。受身文は本質的に非働きかけ性を帯び「てもらう」文は本質的に恩恵性を帯びるので、受身文と「てもらう」文の関係は、可変的性質のみを示すと、Ⅰ[恩恵性―非働きかけ性]、Ⅱ[恩恵性―働きかけ性]、Ⅲ[迷惑性―非働きかけ性]、Ⅳ[迷惑性―働きかけ性]という四つのパタンがある。関与ではすべてのパタンが存在し、弱排除ではⅢとⅣのパタン、強排除ではⅣのパタンが存在する。両構文はⅠのパタンで最も類似し、Ⅳのパタンで最も対立する。