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ルワ語(バンツー諸語)の動詞音調
―音調列右方移動の問題を中心に―

品川 大輔(名古屋大学大学院)

本発表では,バンツー系言語の一であるルワ語 (kirwa) の動詞音調について,その概略を提示し,そのうえで他のバンツー諸語にも見られる音調列の右方移動の問題について,当該言語における解釈案を示した.ルワ語動詞の音調実現のメカニズムは,概略次のように記述される.声調素としては,語根に付与される高音調 (/lH/),主語接頭辞に付与される高音調 (/sH/),目的語接頭辞に付与される高音調 (/oH/) および低音調 (/oL/) などがあげられ,/lH/ と隣接する /sH/, /oH/ はそれぞれ脱落あるいは弱化する.そしてそれら声調素は1音節分右方に移動して実現される.ただし,前末尾辞 (Prefinal) に付与される高音調はその限りではない.

この右方移動の原則の「例外」に対して,(有標)音調の連鎖している部分のみが移動する,という解釈をとることで概ね現象を正しく把握することができるが,音調(アクセント)付与に関して若干問題が残ることを指摘した.現段階における解釈の可能性として,音調移動がなされる範囲は限定されており,その領域内での「部分的」移動がなされているとする試案を示した.

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