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日本語の人称詞における指示対象の移行について
―「こいつ」、「そいつ」、「あいつ」を例にして―

大谷直輝
小川典子
澤田淳

本研究では、日本語の人称詞「こいつ」「そいつ」「あいつ」における指示対象の拡張範囲をコーパス調査から実証的に示し、その拡張の動機づけを認知言語学的観点から明らかにする。

「こいつ」「そいつ」「あいつ」は、「こやつ」「そやつ」「あやつ」を源流とする。それゆえ、一見、それらの指示対象は[人間]に限定されるように思われる。しかし、コーパス調査の結果、「あいつ」と異なり、「こいつ」「そいつ」では、[人間]以外の対象も指示する例が認められた。

  • (1)こいつ / そいつ / あいつはいい人だ。(人間)
  • (2)こいつ / そいつ / ??あいつは値打ちがあるものだ。(具体物)
  • (3)こいつ / そいつ / ??あいつは傑作だ。(抽象物)
  • (4)こいつ / そいつ / ??あいつが起こったのは1992年だった。(事態)

この事実は、「こいつ」「そいつ」では、「やつ(奴)」の[+human]の意味特性が失われ、意味の漂白化が進行したことを示している。

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