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接触言語としての「蒙文直訳体」

川澄 哲也(京都大学大学院)

元朝時代の特定の文献に見られる,構造が蒙古語に酷似した「蒙文直訳体」という漢語の性質について扱った.先行研究ではこの言語の性質について,「実際の口語」「翻訳用の書面語」という二つの見解が対立したままであった.

本発表では,現代の漢語青海方言との類型的比較という方法を用いた.青海方言は古くから蒙古語系,或いはチベット語系言語と接触を繰り返しており,その結果標準漢語には見られない特異な変容を来している.具体的には (1) SOV構文の多用 (2) 後置要素による格標示 (3) 否定辞の語順変化 (4) 存在動詞「有」の用法拡大 (5) 複数標識の用法拡大という変容である.これら諸現象はいずれも周辺言語との接触に起因する変容であると考えられるが,問題としている蒙文直訳体でも同様の変容が確認できた.加えて元代の私信など,同時代資料による証拠も示し,「蒙文直訳体は接触の結果発生した,実在の接触言語である」という考えを提出した.

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