現代モンゴル語の「二重直接目的語」構文
梅谷 博之(東京大学大学院)
先行研究でモンゴル語の二重直接目的語構文として挙げられているのは,次の二つである.構文 (A):他動詞派生の使役文中において,被使役者名詞句と動作対象名詞句が直接目的語で現れる構文.構文 (B):他動詞文中で,動作対象名詞句と数を表す名詞句が直接目的語で現れる構文(例えば「学生を全員を~する」といった表現).
モンゴル語の直接目的語の形は4つある.従って,2つの直接目的語がとる形の組み合わせは16通りあることになる.本発表ではこの組み合わせについて考察し,可能な組み合わせが構文 (A) と構文 (B) では異なることを指摘した.そして,この2つの構文を区別することは,意味の点だけでなく,形式的な点からも妥当性があることが分かった.