遊離数量詞の構成素性と等位接続
木村 宣美(弘前大学)
本発表では,遊離数量詞 (floating quantifiers) 構文の遊離数量詞とそれが修飾する名詞句の構成素性 (constituency) を考察した.(A) 等位接続される語(句)は同じ範疇でなければならない,(B) 被接続要素は統語的構成素である,(C) 等位接続は構成素等位接続と非構成素等位接続に区別されるとの仮説を組み込んだ分析を提案し,次の2点を主張した.[1]名詞句+格助詞+数量詞(あるいは副詞)から成る連鎖は,名詞句 (NP)・動詞句 (VP) あるいは節 (IP or TP) という構成素を成し,範疇 (categories) に着目することにより,川添(2002)が区別する帰一連鎖と非帰一連鎖を統一的に扱りことができる.帰一連鎖とは,構成素としての名詞句で,非帰一連鎖とは,構成素としての動詞句あるいは節である.[2]Koizumi (2000) の顕在的動詞上昇を仮定することで生じる構造的多義性が克服され,神尾(1997,1983)が提案するように,2種類の遊離数量詞の構成素性を認める必要がある.