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歴史・方言データからみた分裂文の意味と構造

吉村 紀子(静岡県立大学)
仁科 明(静岡県立大学)

現代共通語の分裂文にあらわれる「の」の素性に関しては,代名詞であるとする分析(=(1))と,補文標識であるとする分析(=(2))とが行われてきた.さらに,そのどちらでもあり得るのだとの提案(=(3))も行われている.これら分析の当否は,現代共通語の事実だけからは決することが困難である.本発表では,日本語史研究の知見と方言のデータの両面から,理解の手がかりを得ることを目指した.まず,古代語では(現代共通語の「の」に対応する位置には特別な形態が現れないので「Ø」とすると),分裂文の「Ø」は代名詞・補文標識のどちらの理解をも許す振る舞いを示すことが指摘されている.一方,方言には,代名詞と理解される形式と,補文と理解できる形式が別形態として存在し,その双方が分裂文の「の」の位置に現れるものがある.これら事実は,上記三つの分析の内,(1)(2) よりは,(3) の提案の蓋然性が高いことを示すものであると考えられる.

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