譲歩条件構文における相関的スケール性について ―日英対照言語学的アプローチ―
澤田 治（早稲田大学大学院）
本発表では，日英語の譲歩条件構文の条件節と帰結節にスケールがある場合，２つのスケールはどのように相互作用しているのかについて考察した．具体的には，以下の４点を論証した. (i) 日英語の譲歩条件文には，条件節と帰結節の相関的な（2次元的な）スケール性を有しているケースが存在する. (ii) 条件節と帰結節の２つのスケールから生み出されるスケール含意とスケール推意は，２次元から或るスケールモデルによって捉える必要がある. (iii) 2次元的スケールが仮定された時，スケール推意の取り消し方には，「p推意の取り消し」，「q推意の取り消し」，「p推意とq推意の両方の取り消し」の３種類の取り消し方がある. (iv) 譲歩条件文には，帰結節にスケールがない例も存在するが，こうした例でさえも，語用論的知識を援用し，他の命題と比較することによって帰結節にスケール性が生まれる．
