日本語を母語とする成人と小学生の語彙認識における分節のメカニズム
坂本 洋子(濁協大学大学院)
本発表では,日本語を母語とする成人と児童の語彙認識における語境界を担う音韻単位を明らかにするために大学生,ローマ字既習の小学4年生,ローマ字未習の小学4年生を対象に Word spotting(埋め込み語検出)の実験を行った.実験1ではモーラを語境界とする分節は成人のみならず児童でも可能であるか否かについて検証を行ったところ,児童もモーラによる分節が可能であった.実験2では音素を語境界とする分節を行なうことが成人と児童は可能であるか否かについて検証を行ったところ,ローマ字既習の児童,未習の児童とも音素を語境界とする分節が可能であった.実験1と2の結果の比較から,日本語の語彙認識における語境界としての音韻単位は,モーラも音素も潜在的には機能する可能性が存在するが,日本語を母語とする成人と児童に関してはモーラのリズム仮説が適用されることによりモーラの音韻単位が選択される可能性が高い.