移動動詞、経路と事象構造
磯野 達也 (くらしき作陽大学/東京大学大学院)
本発表では、事象構造は最大で(1)の「行為」「経路・変化」「推移」「結果状態」の下位事象からなることを提案し、この提案が(2)の着点の前置詞句の二重共起や動詞の自他交替を説明することを示した。
(1) [Event 1 [Event 2 x ACT AND y MOVE ] CAUSE [Event 3 BECOME [Event 4 y BE AT z ]]]
(2) John { *entered / ran into } the room to the blackboard.
(1)を仮定するとto、enter、run intoの事象構造は(3)、(4)、(1)で、enter は[ x MOVE ]を持たないので(2)で容認されない。さらに、名詞entry がinto句と共起することも(4)で説明できることを示した。
(3) to : [[ x MOVE ] CAUSE [BECOME [ x BE AT z ]]]
(4) enter: [[ x ACT ] CAUSE [BECOME [ x BE AT z ]]]