逆接の音韻論と句構造
時崎 久夫 (札幌大学)
but などによる逆接関係では、and などの順接と異なり、間にポーズが起こりやすく、連結による音変化が起こりにくいということが指摘されている。本発表では、その音韻的な違いは、句構造すなわち統語境界の違いによるものであるということを述べた。
まず逆接で(al)though などの明示的な従属接続詞が存在する場合、従属接続詞を持たない順接の場合より1つ多い統語境界が、それが含まれる被接続構成素の端に生じる。そしてその境界が写像規則によって音韻境界として解釈され、ポーズを生み、音変化を阻止すると論じた。次に明示的な従属詞がないbut のような場合も、非明示的な従属接続詞(THOUGH)が先行する被接続構成素に存在し、明示的な従属接続詞と同様に境界を増やすことを、明示的な従属接続詞との意味の平行性及び同一指示解釈の可能性を証拠として論じた。また発話の速度、文の長さという要因も扱えることを主張した。