いわゆる日本語のEvent Cancellation について
山川 太(大阪外国語大学)
本発表では、いわゆる日本語のEvent Cancellation について考察した。この現象には、用いられる動詞によって可能な場合と不可能な場合(「酒を温めたけど温まらなかった」「*コップを割ったけど割れなかった」) があるが、これに対して、動詞の意味構造(LCS) の観点から説明を試みた。大まかにまとめると、以下のような主張・分析を行った。
(1) 日本語の動詞は必ずしも結果の達成を含意しないのではなく、達成を含意してはいるものの、達成された結果状態が曖昧である(「結果状態部分の抽象化」による)ために、結果、Event Cancellationが矛盾なく許されるのである。
(2) 「結果状態部分の抽象化」は、「段階性の有無」「trivial/nontrivial standardの区別(Kennedy and McNally(1999)、Tsujimura(2001))」から説明され得る。