シベ語の使役・受身を表す動詞接尾辞-ve
児倉 徳和(東京大学大学院)
本発表ではツングース諸語の一つであるシベ語の動詞接尾辞-ve について考察した。先行研究では-ve は使役・受身を表わすとされているが、本発表ではまず、動作者を表す名詞句の格と、文の表す意味を根拠に、-ve が使役・受身のほかに、許可・使役受身・推量の用法を持つことを指摘した。さらに-ve の5つの用法が、それぞれ動詞の自他や目的語の格により限られた場合にしか成立しないことを示した上で、用法の成立する条件から-ve の各用法の関連をまとめた。そして結論として、-ve の現れる文の主語が、能動文の主語または目的語と対応する場合と、能動文中に対応する要素がない場合がありそれぞれの場合が-ve の5つの用法に対応していることと、-ve の現れる文に共通して「主語の(直接的な)関与なしに事態が生起している」ことが表わされていることを指摘して、動詞接尾辞-ve の用法全体の共通性を捉えることができる可能性を示した。