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目的を表わす助詞「に」

中島 尚樹 (University of Manchester)

 文法化の研究では,目的を表わすマーカーが,着点,或いは,Allative から派生することがよくあることが指摘されている.ここでは,「太郎はパリにフランス語の勉強に行った」のような助詞「に」で表わされる目的の二句(後置詞句)と,「太郎はパリにフランス語を勉強しに行った」のような目的の「に」節を取り上げ,着点の二句から目的の二句,さらに目的の「に」節へと拡張する過程のうち,特に最初の過程について述べた.

 着点の二句には,移動後の場所での行為を含意するタイプがあることを指摘し,この含意を引き金にして,意味と形式を組換えるプロセスの一つであるMetanalysis (Croft 2000)によって,「目的の行為」という意味が着点を表わす「NP ニ」という形式と結びついたという分析を提案した.限定された二句の分布や「まで」など着点を表わす他の助詞の文法化の可能性などがこの分析で説明されることを示した.

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