中国語のwh条件文―wh句/代名詞taの交替について―
毛利史生
林幸代
鄭磊
林幸代
鄭磊
Cheng and Huang(1996)では、中国語のwh条件文において無差別束縛分析、rugou ‘if’条件文、dou ‘all’条件文ではEタイプ代名詞分析がそれぞれ採用されている。条件文のタイプに応じて、束縛代名詞とEタイプ代名詞が相補分布の関係で生起するという分析であるが、実際にはwh条件文にも代名詞の出現が観察される。本発表では、Bruening and Tran(2007)の分析を踏襲し、帰結節のwhはサイドワード移動によって残されたコピーであると主張する。一方、帰結節に代名詞taが出現するケースにはEタイプ代名詞分析を採用する。具体的には、ta代名詞は状況変数を取り、個体タイプを返す関数表現であると分析する。taが出現して非文になるケースでは、wh条件節がNEC演算子のスコープ領域より高い位置に付加されているとする。NECに束縛されない条件節のwhはEタイプ代名詞の適正な統語的先行詞として振舞えないことを提案する。