That/φ 関係詞に導かれる時の関係節の意味と構造
―特に先行詞の性質について―
渡辺 良彦(大東文化大学)
本発表では、関係節内の空所( gap) の性質によって先行詞の統語範疇が決まるとする考え方に立脚し、that/φ 関係詞に導かれる時の関係節の先行詞は「副詞的」範疇としてのTense-Adverbial( 時制の副詞類) であることを主張した。Wh 句の時の関係節と異なり、that/φ の時の関係節では、時の副詞節に見られる時制的特徴( 後行性を表す時制形式( 未来時制) は不可) が現れる。関係節は限定詞の補部であるとする分析にもとづき、that/φ の関係節の先行詞名詞はある時点を基準点として「特定の時」を指す時制の副詞類と考えて他の単純な時制の副詞類と同様[Tns]をもつと分析し、( 上記の時制的特徴を含め) いくつかの帰結が派生することを論じた。空所には「[Tns] + 特定の時」を表すTense-Adverbi a l が存在し、空所がこのような性質をもつ場合、先行詞はNP ではなく、Tense-Adverbial が先行詞となると主張した。