日本手話の多重疑問詞疑問文
山本 将司(九州大学大学院)
手話は身体器官によって表示される視覚言語である.その中では,手指という身体部位以外にも顔の表情や動き等が重要な役割を果たしている.例えば,手話疑問詞疑問文では疑問詞疑問という文タイプに特化した顔の表情による表現(Non Manual Sign-WH,NMS-WH)が要求される.
本発表では,手話言語に現れるNMS-WHを音声言語に現れる韻律的な要素に相当すると仮定する.音声言語の韻律構造は焦点化等の文意と深く関連しているが,手話言語におけるNMS-WHも同様であること示す.具体的には,日本手話の疑問詞句とNMS-WHに関する特性がイタリア語の焦点化要素と焦点化に伴う韻律的特性と等質のものであるとし,この仮定より二つの言語が多重疑問詞疑問文に関する制限を持つことを説明する.