日本語の取立て助詞とフォーカス、一般化量化子
中村 ちどり(岩手大学)
日本語の取立て助詞(係助詞、副助詞)の「も」「は(対比)」「だけ」「しか」「すら」「さえ」は、「a. 学生が、5人は 来た。」「b. 学生も、5人来た。」のように、数量詞や名詞を取立てる。主語名詞句内の取立て助詞が、a. のように数量詞を取立てる場合と、b. のように一般名詞を取立てる場合について、フォーカスと一般化量化子の観点から分析する。「取立て助詞はフォーカスされた要素に対して対立的な意味解釈を与える」と考えることができるが、a. のように数量詞にフォーカスがある場合は、一般化量化子理論における典型的な限定詞解釈を生む。これに対し、b. のような名詞(句)フォーカスの場合は、擬似的な一般化量化子解釈しか持つことができない。また「c. 学生も、5人は 来た。」のように両方の解釈を持つ場合もある。本研究では、取立て助詞のフォーカスに応じた量化子解釈が行われる仕組みを示す。