語順の意味的動機付けを求めて
李 在鎬(情報通信研究機構)
井佐原 均(情報通信研究機構)
井佐原 均(情報通信研究機構)
本発表の目的は二点ある。a) 日本語の語順に対する従来の分析を批判的観点から検討したあと、意味と形式のペアとなる構文(construction)の観点から捉えなおすこと。b) 計量言語学の方法論を用いて構文現象の統計的分析の具体的方法論を提案することであった。ケーススタディとしては助詞「で」に関わる構文現象を分析し、次の主張を行った。日本語の語順は経験世界の認知事態に対する認知主体の捉え方(construal)を反映するものであり、この事実に対する一貫した記述のため、言語使用に対する統計的指標を用いた分析が有効である。なお、この主張の論証として動詞と格パターンの共起関係の強さをT-scoreで測定した結果、語順による非対称性が見られたことを報告した。以上の考察から最終的には日本語における構文の定義をめぐって、語順の制約を認めた構文記述の必要性を主張した。