日本語の語りにおける指示表現
―その形式の分布と選択要因―
青木 玲子(東京大学大学院(現・株式会社インテック))
藤井 聖子(東京大学)
藤井 聖子(東京大学)
本研究は、語り談話における指示表現の分布とその選択要因を明らかにすることを目的とした。新情報導入と文脈照応の名詞句を分析対象とした。分析指標として、Clancy(1980)の認知的制約の分析方法、及び、Du Bois(1985, 2003a, 2003b)の選好的項構造の理論を援用した。
分析の結果、以下が明らかになった:
1) full NPは、情報の新旧・有生/無生に関わらず使われ、出現頻度が高い。省略は指示対象が旧情報で有生のときに使われる。
2) 認知的制約:影響を与えるが、full NPよりも省略に対して強く働く。
3) 選好的項構造:文法役割による指示表現の出現傾向には有意差があったが、full NPよりも省略に対して影響を与える。→Du Bois の‘Non-lexical A Constraint’の再考。
4)A(他動詞主語)が他の項と異なる(省略の多用)現象に関して、談話展開上の要因を考察した。