第155回大会(2017年秋季,立命館大学)の大会発表賞(2件)
・木本 幸憲氏
「状態性と事態解釈:アルタ語(フィリピン)に見られる非動作動詞」アルタ語(ルソン島北部)では,他のフィリピン諸語と異なり,動作動詞と可能動詞のほかに状態動詞と形容詞が述語の下位クラスとして区別されることを示した。発表の際にフィリピン諸語の専門家以外の聴衆に対する配慮が若干不足していたところはあるが,論証は明快かつ説得的であり,フィリピン諸語における品詞の問題について重要な知見を提供した発表として高く評価できる。
・髙橋 康徳氏
「定量的な観点から見た上海語の変調域」中国で出版された上海語教材をデータとする量的分析を通じて,上海語の変調域(変調が生ずる単位)は2音節からなるフットとほぼ対応するが,統語境界との対応の遵守が2音節フットの形成よりも優先されることを示した。語学教材をデータとする点も含め,より踏み込んだ分析の余地を残しているが,90年代以降研究の進展がなかったテーマについて量的研究の観点から重要な進展をもたらしたことは高く評価できる。
授賞式(第156回大会,6/24,東京大学)