日本語他動詞構文の獲得
-動詞一般的な知識への段階的発達-

三浦 優生(国際基督教大学大学院)

幼児が構文を獲得する時期において、その知識が動詞一般的なものとして表象される以前に、個別の動詞ごとに構文を構築する時期が存在するとする立場がある。このことを検証するために、新奇な動詞を用いて他動詞構文の理解をはかる実験が行われ、その段階的な発達の存在が示唆されてきた。本発表では、日本語話者の幼児が他動詞構文の知識を動詞一般化する時期を探るため、先行研究と同様に、新奇な動詞を用いた実験的な研究を行った結果を報告する。実験の結果、日本語話者の幼児においても同様に、動詞個別的な知識をもつ段階が存在すること、また、先行する他言語での研究と比較して、その構文知識の一般化の時期が遅いという傾向が得られた。このことは、日本語においては語順や格助詞が不安定な形で与えられるという、環境の影響が示唆される結果となった。