本発表では、(1)におけるような尺度上での「序列の逆転」を表す程度副詞「かえって」、「むしろ」、「よっぽど」に焦点をあて、主として、(i)「序列の逆転」現象に課せられる条件とは何か、(ii)それらの副詞は「既存の想定」や「尺度的捉え方」の点でどう異なるのかという問題を認知言語学的観点から論じた。
(1) Xの方がYよりも{よっぽど/むしろ/かえって}Aだ。
(i)に関しては、「序列の逆転」は「意味論的序列→語用論的序列」、「客観的捉え方→主観的捉え方」への変換によって起こるということを主張した。
(ii)に関しては、「よっぽど」は「YのほうがXよりもAだ」という既存の想定を、「むしろ」は「Xの方がYよりも~Aだ」という想定を、「かえって」はこれら2つの想定を有しているということを論じた。また、「よっぽど」は、2つの比較対象を尺度上で「低くかつ隔たって」捉えていることを明らかにした。