ポライトネスの観点からの現代ロシア語形容詞長短語尾形の違い

北上 光志(京都産業大学)

現代ロシア語形容詞は長語尾形と短語尾形を有し、述語として用いられた場合両方とも使用可能である。従来の研究は形容詞が表す性質の“変化”の有無(長語尾形は変化無し(恒常的、絶対的)、短語尾形は変化有り(一時的、相対的))で両者を区別しているが、この違いだけでは説明できない実例が多い。本発表は“変化”に対する人間心理の表出の仕方に注目し、新たに4項目(1)話し手と聞き手の人間関係、2)話し手の聞き手への心的態度、3)形容詞の語彙的イメージ、4)2人称代名詞の敬称形VY、との関係)を提案分析し述語形容詞二形の違いを次のように解明した。『人間は“変化”しやすいものに対しては不安感を抱き、対象に対して敬遠した心理状態になる。一方、“不変化”に対しては確実性と安心感から対象へ容易に近づきやすくなる。長語尾形は話し手が相手の共感を求めるときに用いるのに対し、短語尾形は話し手が相手と心理的に距離を置きたいときに用いる。』