本発表では，日本語のような主要部後置型の言語における文構造の解析の際に，主要部である文末の動詞がどの程度重要な役割を果たしているのかという疑問を探るため，文プライミングの手法を用いて，語順の反復による影響と動詞の反復による影響とを比較する２つの実験を行った．呈示方法は，プライム文を聴覚呈示，ターゲット文を視覚呈示とする cross-modal priming task を用い，被験者にはターゲット文に対する意味的整合性判断を課した．実験の結果，SOV，OSV 両語順において動詞反復の効果が認められた．また，OSV文の処理において，動詞反復があり，かつ語順の一致がある条件が特に反応時間が短いことが明らかになった．これらの結果から，文解析においては入力に対する逐次的な文構造についての予測と，動詞そのものが持つ文構造についての情報との両方が重要な機能を担っていることが示唆された．