本発表ではフランス語のle fait queの中で用いられる法の選択を扱い、(1)目的語位置と主語位置では接続法を用いる動機が異なること、(2)選好される文構造でのpresuppositionとassertionの区別が法の選択に関わっていることを示す。
Faitが目的語位置にあるときは直説法が優勢であり、接続法が用いられるのは存在を前提としない述語あるいは疑問・条件・命令の対象になっている場合に限られる。つまり、接続法は非現実導入要素と呼応して現れる。他方、主語位置では接続法の頻度が高く、主語という文法関係そのものが接続法を用いる要因になっている。これに対し本発表では、フランス語において選好される文構造では主語が焦点に入らず、そのために形態的にassertionを形成できない接続法が用いられることを主張する。