サオ語の動詞について

新居田 純野(台湾 大葉大学)

 台湾中部の日月潭周辺に住むサオ族の言語・サオ語はオーストロネシア語族に属するが、本研究では、サオ語の動詞のもつ他動性がシテ焦点形(Actor Focus)、ウケテ焦点形(Patient Focus)、使役文(Causative)、相互文(Reciprocal) の形態や統語に反映していることを示した。

 また、これまで、接辞のいくつかについてその働きは先行研究でも論じられているが、他動性の観点から接辞をみた先行研究はなく、本発表では、動詞のもつ他動性からそれぞれの動詞における接辞が異なることを示した。つまり、他動性の高い動詞はAF形、使役形、PF形、相互形に関して作られやすく、また接辞も共通しているという特徴を持ち合わせているが、他動性が低くなるにしたがって、PF形と相互形が作られにくくなり、また、AF形や使役形を作る接辞も異なってくることを明らかにした。