本発表では,統語解析において格助詞が担う機能に着目して,解析装置が目的語位置の名詞句を処理する際に,格助詞の違いによって異なる処理を行っていることを示した.解析装置が格助詞の情報を用いて次に入力される要素を予測する際に,(i) ニ格名詞句入力時には,予測される要素がヲ格名詞句と動詞に限定される,(ii) ヲ格名詞句入力時には,予測される要素が動詞のみに限定される,という二つの方略を提案した.そして,それらの方略の妥当性を実験心理学的手法を用いて検証した.実験の結果は,解析装置が目的語名詞句の格助詞の違いに関わらず同様の予測を行っていると仮定した場合,説明できないものであり,本発表で提案した方略に基づく予測と一致するものであった.さらに,この結果は,解析装置が既に入力された要素間の関係を解析するだけではなく,次に入力される要素を予測するという機能を持っていることを示唆している.