本研究は、日本人英語学者の言語産出 (language production) プロセスにおける動詞の語彙情報の役割について、心理言語学的実験にもとづき、報告するものである。本実験では、文完成課題を用いて、統語的プライミングが言語産出に及ぼす影響について調査した。
その結果、動詞が同じ場合は同一構造を繰り返し用いる傾向が見られ、動詞が異なる場合はその傾向が見られず、Pickering & Branigan (1998) と同様の結果が得られた。このことは、書き言葉の言語産出において統語的プライミング効果があることを示している。また、テンス、アスペクト、数の要因を含む実験文では、それぞれの要因がプライムとターゲットで同一か否かに関係なく、全般的に同一構造を繰り返し用いる傾向が見られた。したがって、動詞の内部構造的な多様性は言語産出に影響を及ぼさないものと考えられる。