Pullum and Gazdar (1982)、Dalrymple and Kehler (1995)等の研究によって、並行的解釈(respective reading)を変形・移動によって導出する分析は誤りであることが明らかになり、要素間の順序は文脈に依って決まると考えられるようになった。その後、Gawron and Kehler (2000)(2002)(2004)、Eggert (2000)は、"respectively"の意味表示には文脈変数である順序関数(Sequencing Function)が含まれている、と主張している。
本論文では、まず順序関数を用いる分析の理論的・経験的な問題点を指摘する。次に、戸次・川添(2005)、戸次(2005)による、等位接続構造に意味表示の直積を割り当てる分析を拡張し、等位接続構造だけではなく、複数形代名詞/指示詞にも意味表示の直積を割り当てる分析を提案する。この分析の元では、並行的解釈において一見文脈が関与しているように思われた要素間順序の決定は、いずれも直示・照応表現の参照先解決問題に還元されることを示す。