現代日本語には、「僕はもう年だから!」、「お湯がわいたけど!」といったように、接続助詞で言いさした形式の発話が頻繁に現れる。本研究は、この種の発話が聞き手に理解されるプロセスについて考察した。先行研究では、発話理解における言語の特権的地位を認めているために、分析に不備がある。しかし、聞き手の認知プロセスに注目すれば、カラ節やケド節が修飾するのは発話状況において利用可能な心的表象であり、その条件を満たすならば言語的情報には限らないことがわかる。また、一般に発話の聞き手は発話に先んじて発話状況の理解を行っており、それが発話理解に大きな影響を与える。以上より、接続助詞言いさし発話は、そのような「発話状況に関する聞き手の理解」に対する修飾表現としてはたらいている、と主張する。接続助詞言いさし発話は、それを聞いた聞き手に発話状況の特定の側面を向けさせることで、一定の談話機能を達成していると考えられる。