本研究の考察対象は、日常言語から逸脱した新奇表現の意味解釈である。慣習的言語表現との関係に着目しながら新奇表現の理解容易性と意外性の関係及び意味の解釈にみられる傾向について検討した。被験者に慣習的な言語表現から5段階で徐々に逸脱した言語表現を提示し、各表現の理解度と意外性について回答を求めた。その結果、慣習的な言語表現から一段階から二段階程度の逸脱ならば理解度も意外性も保障されることがわかった。逸脱が過ぎると無意味文と判断され、意外性も下がるという傾向が見られた。さらに、逸脱した言語表現から想像される意味について自由回答を求め、意味解釈のメカニズムを調査した。その結果、理解度の高い新奇表現の意味は慣習的言語表現の影響を受けず、その言語表現単独で理解しようとされ、解釈に幅がみられた。一方、単独で意味を推測することが難しい新奇表現では、慣習的な言語表現に則した解釈をする傾向がみられた。