韓国語の「回想」の表現-te-は、(1) 伝達文で「事態を過去に直接認識したこと」を表す用法(「彼が来た[のを見た]よ」)と、(2) 独り言的な文で「思い出し」を表す用法(「誰が来たっけ」)を持つ。日本語の「回想」の表現「ケ」は、標準語では (2) しか持たないが、東北方言では (1) も持ち、-te-に酷似している。 本発表では、両形式を「命題の立証作業」のマーカーと規定することで、(2) を命題の妥当性の計算中、(1) を計算完了後の場合として包括的に説明した。
また、-te-と東北方言の「ケ」の類似点として、(1) における(a)発話現場との隔たり、(b)一人称主体の非容認、(c)上接の無標形式vs.過去形のアスペクト対立、相違点として、-te-の場合に、(a)非動的述語の過去形のような使用や(b)従属節生起の制約が小さく、(c)「思い出し」の用法の制約が大きいことを示した。
以上から、ムード性が主な標準語の「ケ」に比べ、両形式は共にテンス性が強いが、-te-の方がその傾向が顕著であると結論付けられる。