張　盛開 (東京外国語大学大学院)

本発表では，漢語諸方言における除外と包括の有無や，その使い分けについて考察する．どの大方言にも除外と包括の対立を持つ下位方言が見られたが，除外と包括の持つ確率は高い順に官話･閩語･贛語･呉語･客家語･湘語･粤語である．それぞれの方言における除外と包括の対立は，語形・使用実態・分布が異なっている．更に，分布地図を作成した．その地図にみる分布からは下記のことを指摘する．

1. 沿岸地域(閩語)のほうで内陸部(湘語)より除外と包括の対立が多くみられる
2. 湘語と呉語が，除外と包括の対立においては全く異なる傾向を示している
3. 客家語と贛語は除外と包括の対立を持つ確率がともに高く，近い系統関係を示している
4. 北方官話や閩語以外の諸方言では，大都市の方言で除外と包括の対立がみられない