従来、チュルク諸語において敬語はあまり発達していないとされてきたが、少なくともウズベク語の一部の方言では比較的それが発達しており、日常きわめて頻繁に使用されている。タシュケント市やマルギラン市、フェルガナ市などでは「複数」を標示する接辞 -lar が、コーカンド市一帯ではそれに加えて「相互」「共同」「複数」を標示する接辞 -iš が敬語としても使用される。敬語のための専用の形式は存在せず、複数を標示する接辞が敬語としての機能を持っている。これらウズベク語諸方言における敬語は基本的に、話し手が文中の登場人物のみを高める「素材敬語」、高められる対象が話し手と登場人物の関係のみで決まる「絶対敬語」、としての性質を持つ。しかしながら、聞き手と登場人物の関係によって話し手が敬語の使用・不使用を決める「相対敬語」としての要素もわずかながら観察される。