本発表は、日本語で「とりたて詞」と呼ばれるような焦点化要素が、言語間でどのような相違点を見せるのか、という点について、(1) 表面上の分布位置、(2) 実際に意味的な影響を及ぼすことのできる範囲とそのパターン、およびそれらの相関関係を中心に論じた。
理論言語学的観点からは、とりたて詞の分布位置と意味のずれを生成文法統語論から分析した先行研究を取り上げ、それらの枠組みでは捉えきれない分布の傾向がとりたて詞には存在することを示した。
対照言語学的観点からは、とりたて詞と意味が対応するドイツ語の焦点化要素との対比を行い、日本語、ドイツ語ともに共通するフォーカスのパターンと、日本語のみに可能であるフォーカスのパターンの両方が存在することを具体例を挙げて示した。
さらに、両視点からの議論が焦点化要素の体系的研究においてどのように位置付けられるのかという点について論じた。