属性記述文にあらわれる付加詞の生起条件
-語用論的観点からの一考察-

神戸 百合香(筑波大学大学院)

本発表では、日本語における「健にとってこの本は難しい」のような属性記述文にあらわれる複合格助詞「にとって」句と、英語におけるThis book reads easily for Maryのような主語の特性を記述する機能をもつ中間構文にあらわれるfor句を考察対象とする。

従来、日本語の複合格助詞「にとって」句および英語の中間構文におけるfor句に関して、統語的、意味的特性については様々な研究がなされている。しかしながら、生起条件やデータに対する話者の容認度の揺れに関しては詳細な研究はなされていない。

そこで本発表では、Goldberg and Ackerman (2001)が提案した付加詞の生起条件に基づき、情報の有益性という観点からこの問題に説明を与えることを試みる。そして、「にとって」句およびfor句は共通して、それらが生起する文の機能、つまり主語の属性を記述する機能を際立たせる情報を担うことを主張する。