すでに話者が絶えて再調査が不可能な樺太アイヌ語の動詞接辞–(a)hciについて、これまで収録された資料の中から事例を取り出して整理分析してその意味と文法的機能を明らかにしようとした研究である。
考察の結果、–(a)hciは、主語または目的語が3人称複数のときに動詞に付着する複数を表示する人称接辞であること、また「老人ことば」においては1人称、2人称の場合でも1人称者、2人称者に「その周囲の人々」を含む復習集団が主語のときに用いられることが分かった。