動詞のテ形や連用形を含むニムケテ等の日本語の後置詞には,文法化理論から,特定の文脈に基づく再分析により後置詞化したと説明できるものがある。それらは通時的に動詞とも後置詞とも解釈できる文脈がまず現れてから,後置詞としか解釈できない例が現れるという順序をみせる。本発表はそのような7つの後置詞から,再分析を受ける(1-3)の特徴を同時に備えた文脈を特定の動詞が構成しうることが,日本語の動詞の後置詞化の要因となっていると主張する。
(1) 文法化する動詞が後項述語の手段や付帯状態を表すテ形や連用形の節を構成し,且つその節に含まれる動詞の項が,後項述語の表す事態における当該の意味機能を表すと解釈可能である。
(2) (1)の項以外の項が後項述語の項と共有されたり,既知情報であったりして,表層上失われている。
(3) (1)の項の名詞を表示する格形式に隣接するかたちで,文法化する動詞のテ形や連用形が後接している。