近世における「テシマウ」の使用
花井 善朗(ミシガン大学)
本発表では,近世における「テシマウ」の使用について発表する。現代日本語において「テシマウ」は,アスペクト,ムード・モダリティ,そしてその中間的な意味を表すという,幅の広い用法があることで知られており,その様々な用法を説明する際に,アスペクトを中心に置く議論と,ムード・モダリティを中心に据える議論という両者が存在する。本発表では,動詞「シマウ」から「テシマウ」への文法化が起こったと考えられる近世における「テシマウ」の使用について分析し,様々な用法を持つに至るまでの過程において,どのような傾向が見られるかを議論する。
研究の方法は,近世に書かれた28の文献の中から抽出した95の実例についての分析を中心とする。また,当時の類似表現「テノク」との関係についても触れる。本発表では現代語における「テシマウ」の実例についての検証はしないが,本研究は現代語の「テシマウ」の議論にも有益であると考える。