人間が文の意味を理解するためには,文中の要素が他の要素とどのような依存関係を持っているかを把握する必要がある。たとえば,「学生が3冊図書館で参考書を借りた。」のように,数量詞とそれが依存する名詞句が隣接していない文を理解する際には,これら二つの要素の依存関係を把握する必要がある。本研究では,入力される各要素が文中のどの要素と依存関係を持つかを決定するために人間が行う処理の過程を明らかにすることを目的とした。具体的には,母語話者が日本語の数量詞を含む文を読む時の脳の反応を観察することを通して,依存関係を決定する過程について考察した。そして,従来の研究において,「未統合の要素の保持」「要素の統合」という二つの過程から構成されると考えられてきた依存関係の決定過程は,「処理開始の判断」「未統合の要素の保持」「要素の統合」という三つの過程から構成されているということを示した。