本発表では，日本語の文処理において顕在的韻律情報が担う機能に着目して，聞き手が聴覚を通して文を理解する際に，F0に現れる現象が統語処理に影響を及ぼすことを示した。従来，Major句の形成は統語構造の影響を受けることが知られている。まず，有アクセント語の連続では「アクセントの弱化のリセット」が，また無アクセント語の連続では「句頭の低起」がそれぞれMajor句境界において観察される。そこで，この二つの現象が文理解処理に影響を及ぼすかどうかを検証するために，音声刺激を用いた文正誤判断課題を課した実験を行った。その結果，顕在的韻律情報の一つであるF0のパターンとして，アクセントの弱化のリセットが行われる位置だけでなく，句頭の低起が行われる位置も統語処理に影響を及ぼすことが明らかになった。これは，アクセントの有無に関係なく，文処理においてF0に現れる現象が統語処理に影響を及ぼすことを示している。