南(1964, 1974, 1993)による従属節の分類は,今日の日本語研究に少なからぬ影響を及ぼしている。南の分類は「どのような要素が従属節の内部に現れうるか」という観点から為されており,現れうる要素はA類/B類/C類の順に多様になることが知られている。しかしながら,根拠となる言語現象には例外が多く見られ,異なるレベルの言語現象が関わっている可能性がある。
本発表では,まず従属節が入れ子構造をなしているという主張に対する反例を挙げる。そして残った現象については,南の分類を 1) 従属節導入表現が接続する用言に指定する活用形,2) 主語コントロールの有無,3) 意味表示,の三つの語彙的情報に還元することによって,例外のない説明が得られることを示す。また,南の分類は概念レベルの階層構造と統語構造とのインターフェースであると解釈されてきたが,実は活用体系がその役割を果たしている,という解釈を示唆する。