修飾語としての「も」句

小淵-PHILIP 麻菜 (ユトレヒト大学)

現代日本語の「どの学生も踊った。」のような不定代名詞構文は,Shimoyama(2001)において,構成性原理に非常に忠実な意味分析が提案された。しかし本稿では,「も」句(どの学生も)を一般化限量子とみなすこの分析に従うと,「学生がどの人も踊った。」あるいは「学生誰もが踊った。」のような形の文においては論理的に意味計算が不可能になるという問題を,タイプ理論の観点から指摘し,これを解消するために「も」句を付加詞のひとつである修飾語と仮定する新たな分析を提案する。さらに,「学生が誰か来た。」や,「誰か有名な人が来た。」のような「か」句を含む不定代名詞構文もまた,「か」句を修飾語と仮定する分析が必要であることを主張し,「も」句と「か」句の統語的および意味的な類似点と相違点,そしてその統一的な分析の可能性を論じる。