2つのものの同等性や非同等性を表す構文の中に,比較構文(例文(1))と類似構文(例文(2))がある。
(1) 太郎は次郎より背が高い。
(2) 太郎は魚のように泳ぐ。
本発表では,比較構文が未発達な言語が存在する一方,類似構文が調査したすべての言語に存在することを示す。これは,2つのものを比較対照して述べる際,二者間を比較してその質を述べるよりも,両者の類似性を述べる方がより文法化された事項であるからと主張する。(1)の比較構文は太郎の背が高さについて次郎と比較し,比較基準マーカーとして「-より」が使用される。(2)の類似構文では太郎の泳ぎ方を魚にたとえ,比較基準マーカーとして「-のように」が使われる。本研究では,この比較基準マーカーに注目し17言語のサンプル言語を用い調査した。その結果,比較構文については,その形式が未発達な言語がある一方,類似構文はすべての言語で比較基準を表す形式が存在することが判明した。