日本語における音象徴語を含む述語の事象タイプ決定
秋田 喜美 (神戸大学・院/学振)
日本語音象徴語(擬音・擬態語)の韻律特性(2拍重複・語幹末要素・長母音等)は,(1)「舞を{一瞬/*暫くの間}じろっと見た」(語幹末促音 →punctual)のように特定のアスペクト特性と結び付く。しかし中には,(2)「舞を{?一瞬/暫くの間}じっと見た」のような一般化違反が見られる。こうした「反例」は,音象徴語の二つの意味レベルを区別することで解決できる。即ち,(2)をdurativeにしているのは「対象を凝視する」という「じっ(と)」の語彙的意味だとし,この語の韻律特性が担う音象徴的意味はアスペクトとは無関係の‘intensity’のような拡張的意味だとすれば,一般化には抵触しない。重要なのは,事象タイプも音象徴的意味も,決定付けているのは音象徴語の語彙的意味だということである。即ち,これらの現象から,「音象徴語は特殊だ」という通念に反し,一般語彙との平行性が窺える。