日本歌謡におけるアクセントの実現

小平 百々子 (筑波大学・院)

日本語の歌謡では,特殊モーラを含む場合を除き「1音符 ⇔ 1モーラ」という対応が守られ,歌詞の音調型が旋律に反映される。しかし,近年では「1音符 ⇔ 複数モーラ」という対応も多数みられ,音調実現のされ方も多様になりつつある。歌詞と旋律の対応における,上記2つの変化を結びつけ,以下のように結論付ける。日本歌謡では,(1)ピッチアクセントは,原則的に,ピッチアクセントにより実現される。(2)作者や歌い手によっては,ピッチアクセントをストレスアクセントにより実現する。例えば,低高型の音調型において高アクセントを受けるモーラは,旋律において,高いピッチを与えられることにより「高さ」という卓立が与えられるのではなく,音楽的に強い位置に配置されることにより「強さ」という卓立が与えられ,さらに,長音化し「長さ」という卓立が与えられる。その前後の要素は,卓立を与えられたモーラに付随する要素となり,同一の音符に付与される。